摂理。

木曜の夜、スイス中銀はスイスフランの買い支えを突如終了した。ユーロとのペッグは崩れ、スイスフランは暴騰、スイス国内の株式マーケットは急落した。スイス国内の企業は一瞬にして競争力をもぎ取られた。彼らからすれば寝耳に水の事態である。持ち金をごっそりと取られた気分だ。

取られた金はどこに行ったのか。金融マフィアが今ごろ勝利の美酒を味わっているのか。違うだろう。スイス国内の居住者にとっては、手持ちのフランの価値が増したことは間違いない。しかしそれはスイス国内の企業が受けた打撃と引き換えであり、ぬか喜びできるものではない。それならば、取られた金はいつかどこかで形を変えて戻ってくるのか。

ひるがえって日本。金融緩和からもうすぐ丸2年になる。マーケットに流し込まれた金はもともと誰のものだったのか。そしてその金は誰にわたるのか。どうなれば成功と言えるのか。

確かなのは、金融政策にはいつか必ず終わりが来るということだ。無理に買い支えられた相場が、その梯子を外されて宙に浮いた場合にどのような動きをするのか。そしてそれがマーケットにもたらす混乱が、いかに世界経済に深刻な影響を与えるのか。今のうちにイメージしておかねばならない。