地理が好き!

小中高と地理の授業が好きだった。なかでも地図帳が大好きで、あまり興味のない教科の授業の時にはこっそり地図帳を取り出して眺めていた。家に帰っても地図帳を眺めていた。

とりわけ、地図上で色分けされた地形と、道路と鉄道の伸びてゆくさまを見るのが好きだった。都市部は赤、平野や盆地は緑で、山地は茶色に塗られたところから辺りの風景を、曲がりくねった道や線路から道程の険しさを想像して、まだ見ぬ世界に思いを馳せた。

都道府県と県庁所在地は小学校低学年の頃には全て覚えていたし、小学生のうちに全国の市町村名にしても9割以上は聞かれたり白地の地図を見てどこにあるか答えられるようになっていたと思う。その後平成の大合併があって混乱したが、今でもほとんど答えることはできるはずだ。世界の国の名前も同じようにほぼ言える。さすがに首都は厳しいかもしれないが。

中学高校と地図帳はグレードアップしていったのがこれまた嬉しかった。高校時代に使った帝国書院の地図帳は今も手元にある。地図のメインが国内から海外に移り、今度は世界のあらゆる風景を想像した。写真や図が挿入される分量も多くなり、地図帳に没頭しているうちに1〜2時間経っていることもあった。単に地名や山河の名称だけでなく、ケッペンの気候区分と、気候区分に応じた植生の違い、生活様式の違いを妄想するのが好きだったし、統計便覧を眺めては、無味乾燥な数字の列から、それぞれの国の意外な一面を見つけ出すのも好きだった。これがやがて旅好きにつながっていったのだと思う。地球の歩き方を片手にアジアでバスに揺られていた時も、必ず地図のページを開いていた。iPhoneによるGPS機能などがなかった時代だ。

ということで伸び悩む他の教科を尻目に地理だけは抜群に成績が良かった。テストで90点以下をとった記憶はなく、模試でも偏差値75以上あったはずだ(そもそも地歴公民のなかでは地理は圧倒的少数派ではあるのだが)。大学受験も結局のところ地理だけで突破したようなものだ。加えて地理の試験のレベルがマニアックすぎるという理由で早稲田大学も受験した。予想通り重箱の隅をつつくような難問奇問にゾクゾクと興奮した。というかあれは特に興味もないのに地理を選択した人にとっては地獄としか言いようのない試験だと思う。

もちろん受験だけでなく日常生活でも地理の知識は役に立つのだが、なかなか人前で「○○はどこにあるよ」みたいなことを即答で言ってのけたりはできない。「えーなんでそんなこと知ってるの!」などとリアクションされても、「いや、地理好きなので。。」と言うのも恥ずかしいので(苦笑)。