朝のひととき、終わりと始まり。

先週は半期末の一週間ということでフワフワしていたのだが、朝はしっかりとテレビにかじりついてしまった。そう、「あまちゃん」最終週と、「にっぽん縦断こころ旅」の秋の旅シリーズの開始である。

この2番組は、NHKBSプレミアムで朝7時30分より、15分ずつ連続して放送される。こころ旅については最初は朝ドラを見ていた後に流して見ていたのが、いつからかしっかりと見るようになっていた。しかしながら最後まで見ていると遅刻ぎりぎりになる。

こころ旅は視聴者のお手紙に記されている思い出の場所を火野正平が自転車で訪ねながら旅していく、というストーリー。旅番組はたいてい退屈で、見ることもあまりないのだが、なぜかこの番組に関しては中毒性がある。それは正平さんのキャラにある。

今まで火野正平という役者のことはほとんど知らなかったのだが、還暦を過ぎたこの人は正直いってめちゃくちゃ可愛い。元からこんな感じだったのかわからないがとにかく人間が丸い。若いスタッフに対してだだっ子のようにごねる様や、道行く人に名前を間違えられたり他の俳優の名前と入れ違いになっていても、小声でツッコミを入れながらも大らかに接する。同じように年齢とキャリアを積んだ役者ならば(お笑い芸人でさえ)少なからずムッとしてしまうであろう一般人と交流する場面において、ごく自然にふるまっている。それどころか、きれいなお姉さんを見つけると本筋そっちのけで追いかけていってしまう。計算などなくて、本能のままにふるまって、それが見る人に全くいやらしさを与えない。ヒーヒー言いながら坂を登っている姿をさらけ出す60代の俳優も、なかなかいない。

そしておちゃらけているだけでなくて、お手紙に込められた想いを汲み取ってあげようとする姿勢も感じ取れる。わざとしんみりとするような真似はしないが、彼自身が感じた気持ちを、包み隠さず、下手に膨らませることもなくつぶやいている。そんな真っすぐさとおちゃらけ具合のバランスは絶妙である。

あまちゃんについては既にいろんなところで語られているので、なにを言っても二番煎じになりそうなのだが、最終週をゴールと定めていろんな伏線をばら撒き、ひとつ残さずきっちりと回収していったのはなんとも気持ちが良かった。震災の描き方、向き合い方という意味で新しい視点をもたらしてくれた。前作の「純と愛」とつくりが似てるようにも思うのだが、シナリオの精密さではあまちゃんの方がはるかに上だと思う。

最後に、どちらの番組も15分という長さがちょうど良いのだと思う。話題になった半沢直樹もそれはそれで面白かったが、ちょっと隙が出ると間伸びした印象を感じてしまった。スマホも含めて娯楽ツールが多様化しているなかで、長時間単独のコンテンツに集中させることのハードルは高くなっているのだと思う。