片町駅。

仕事始めからいきなりいろいろと立て込んで福井から関西にかけて出張。福井には年末にも行ったのだが、道の脇に積まれた雪の高さがより高くなっていた。基本的に冬の北陸は空が灰色なので、時たま日が差すと世界が変わったように風景が眩しく輝く。雪のなかに靴を突っ込んだり、つるつるの路面で滑ったりもするものの、北陸の冬も楽しい。

北陸から琵琶湖沿いを走る風光明媚な湖西線を通って関西に入る。関西と北陸に住んでいる人以外はまず通ることもないだろうが、琵琶湖の西岸のエリアはほんとうに静かで穏やかなところだ。ウインタースポーツもできるし、夏は琵琶湖で泳ぐこともできるし、いつか悠々自適な生活ができるようなことがあれば是非移住したいと昔から思っている。

大阪でアポイントを済ませて京阪電車に乗っていると、ふと自分が今いる場所が片町駅のあたりだということを思い出した。片町駅、もはや大阪でずっと暮らしている人でもその存在を忘れてしまっている人のほうが多いかもしれない。15年前に大阪の中心部を文字通り東西に横断するJR東西線が開通するとともに、廃駅となった、大阪城の北の端にあった小さな終着駅である。

今ではJR東西線、JR学研都市線JR宝塚線と呼ばれ、大阪の都心を突っ切って関西の西と東を結ぶ幹線路線となっている(関西以外に在住の方には8年前に起こった悲惨な大脱線事故が起きた路線、と言えばわかるだろうか)が、15年前までは、大阪城の北の端を起点として奈良と京都の真ん中あたりに向かって東に延びる、片町線という名のローカルムードすら漂う路線だった。

たまたま母親の実家や母方の親戚が片町線沿線に住んでいたので、小さい頃から片町線が身近にあった。今でも僕は片町線と呼ぶ方がしっくりくる。片町線に乗って遠出をすることが、電車好きだった当時の僕にとってはこれ以上になくワクワクする冒険だったのだ。そして片町線の起点となる片町駅はどん詰まりで線路が切れて車止めが置いてあり、都心に近いにもかかわらず人通りも少なく終着駅の寂れたムードが満点だった。片町駅で飽きもせず到着しては折り返して出発していく電車を眺めた記憶がある。

だからだろうか、小さい頃から僕はちょくちょく電車の夢を見るのだが、なぜか夢に出てくる電車はきまってあの頃(昭和末期から平成初期)に走っていた片町線の車両なのだ。きっとこの先も夢に出てくるのはあの電車なのだろう。

片町駅の跡はどうなっているのだろうか、どこかで機会を作って見に行ってみたくなった。