瀧本哲史 特別授業@東大。〜Von Voyage!!〜
京都大学准教授の瀧本氏が新刊出版を記念して東京で特別授業を行うということで、参加してきた。講演やシンポジウム的なものに参加するのは久しぶり。ついでに言うと実は東京大学の構内に入るのは初めて。御茶の水駅からの道のりは蒸し暑さを感じたが、構内に入ってしまえば緑の多さと人のゆったりとした感じに身も心も回復。用がなくとも来たくなる場所だ。
今回の特別授業は10代、20代限定ともので、あと数ヶ月で30歳となる僕はほぼ最年長に近い。ましてや社会人になって8年目になるのは僕だけだったのでは。両隣りは19歳と21歳の大学生で、会場の席を埋めているほぼ7割は大学生だった。教室のような場所で講義を受けること自体、かなり久しぶりの感覚だ。本を読んだり、議論をすることで学びを得ることはできるけれど、教室で座って話を聞くことで得られる教えも僕にとっては新鮮だった。ちなみに瀧本氏の著書は読んだことがなく、予備知識も皆無で、ほぼまっさらな状態で講義を受けた。
特別授業の内容自体はあまり明かさない方がいいと思うので、断片的な紹介と自分が感じたことを。第一部は交渉の基本原則について。さまざまな概念の説明や事例を絡めながら講義を進めていく。僕自身も仕事上では相手方との交渉の連続なので、このあたりは今までの自分の仕事上の経験を思い出しながら聴くことができた。確かに仕事で一定の水準以上のパフォーマンスを出せる人は、こういった交渉術を、呼吸をするように自然に使いこなすことができている。僕自身も今まである程度はできていたところもあり、一方でまだまだ足りないところもあるなと改めて認識することができた。
休憩を挟んで第二部では、『武器、仲間、結社』という表題で、さらに総括的な内容となった。要約すると、「自分の人生は、自分で考えて、自分で決めていく」ことをベースとして、若者のチャレンジをアジっていたのだが、もう若者を卒業しかかっている僕にとっては、今まで自分の歩んできた道のりと、これからの方向性について見定める時間となった。
残念ながら、今まっさらな状態で何者にもなれる20歳前後の若者と違って、30歳が近付くと、自分の人生でなにを軸にして生きていくかというのか見えてくる。けして新しい可能性を排除するわけではないし、探してはいきたいけれども、今まで歩んできた自分の人生こそが、他者に盗まれることのない自分の財産であると考えて、そこに賭けていくしかないのかもしれない、と感じた。これもサンクコストの考えの一種なのかもしれないが。
今の自分の立場から学生たちの話を聞いていると、やっぱりいろいろ経験しなければ見えないことはあるだろうなと思ってしまう、一方で、最近の学生の意識の高さはすごい(けして揶揄ではない)し、知識レベルも高い。今の若者に吹く逆風は強いが、そこを抜けたところに見える景色はさぞ爽快なものだろうと信じて、僕もまた航海に出る。