乗鞍天空マラソン その1

15年ぶりに乗鞍に行ってきた。15年前と同じピーポロ乗鞍に泊まった。新館が増築されていたものの、当時30歳くらいだった僕と名前が同じ若旦那は、変わらぬ優しい顔で旅館を仕切っており、暖炉や露天風呂も昔のままであった。以前と変わらない大広間で食事をした。変わったのは、夕食に食前酒が出てきたこと、瓶ビールを追加注文したこと、夜に旅館を出て星を見に行ったこと、朝風呂も含めて2日間で5回も温泉に浸かったこと。中身はともかく、年齢上は大人になったのだ。

2日目は乗鞍天空マラソンに出場した。標高1500メートルの観光センターをスタートに、標高2700メートルの位ヶ原まで18.5キロかけて登り、11.5キロかけて標高1900メートルの三本滝がゴールとなる全長30キロのコースである。5時に起きて朝食を摂っていたが、スタート会場に向かったのはスタート10分前で、最後尾からのスタートとなった。アミノバイタル2本とカメラ兼用の携帯電話を入れたメッセンジャーバッグを肩にかけて走り出す。

三本滝までの7キロは比較的緩やかな登りが続く。最初から飛ばしすぎると良くないので、抑えて抑えて8分/キロを切るくらいのペースでそろそろと登る。三本滝を超えるといよいよ本格的に乗鞍岳の斜面に取り付き始める。2〜3キロ位はそれでも走っていたが、徐々にスピードが出なくなり、わざわざジャンプ運動をしている必要がないだろうという速度まで落ちてきたので、速歩きに切り替える。周りの人たちも走ったり歩いたりと思い思いに足を運んでいる。走っているわけではないのでほとんど息は切れない。時々は友達や周りの人とと会話しながら登る。周りには仮装をしている人も多かったし、7年前にフルマラソンを走った時と比べて若い女性の割合が格段に増えたように感じる。12.5キロ付近で、既に山頂折り返しを終えてものすごいスピードで下ってきたトップランナーとすれ違う。往路の12.5キロ地点は復路の24.5キロ地点に該当するわけだ。1本道の折り返しコースなので、往路と復路を走るランナーが拍手をしたり、励ましあったり、ハイタッチをしながら走る。

3〜4キロごとにエイドステーションがあり、スポーツドリンクや所によってはようかんが置いている。10キロを過ぎたあたりで早くもお腹が空いてきた。淡々と速歩きで登り続ける。上を見上げると、ヘアピンカーブがずっと続いており、ごまつぶのような人の列が見える。下を見ると、一面に広がる乗鞍の森が見える。遠く先に連なる山々や雲海も見える。高度を上げるごとに、ひんやりとした風が吹いてきて、あまり汗もでなくなってくる。そして登りも残り2キロくらいとなったところから、道の両側に溶けずに残った雪の壁が現れる。ところどころで写真を撮りながら、山頂まであと何キロだと念じながら登っていく。(次回に続く)