バトン①。

相応の規模の事業を展開している企業経営者(非上場・オーナー経営)との対話のなかで、企業体としての永続性を考えるときに一番悩まれているのはやはり承継の問題だ。法人の寿命は本来ならばいち個人よりも短く、ハコとして新陳代謝を繰り返していくものだ、という考えももちろんあるが、装置産業ともなるとなかなかそうもいかない。アセットをメンテナンスし、スタッフの人生も守りながら、いかに次代に事業をつなげていくか、そしてそこにオーナー一族としての発展もどう織り込んでいくか、という複雑な問いの答えを手繰り寄せるのは、ゼロから事業を起こして安定軌道に乗せるよりも難しいのではと思ってしまう。

いまでこそ第三者承継やM&Aといったような選択肢も一般化しているが、その昔はなんとか男児をもうけて家業を継がせる、という選択肢しかなかったことを思うと、なかなかにギャンブルだったと思わずにはいられない。親がどれだけ目をかけ、そしてカネをかけて環境を整えて育てようとも、子どもがどのように育つかは蓋を開けてみないとわからない。約束された成功パターンはなく、せいぜい親が影響を与えられることと言えば自分を律する姿を背中で見せることくらいだと思う。(明日に続く)