ほどよく空調のきいた部屋でウイスキーの水割りを飲んでいると、手が震え出した。テーブルの上のチョコレートをつかむものの、床に落としてしまう。これは酔いによるものなのだろうか、それとも気分の昂ぶりによるものなのだろうか。
いつもよりも口が滑らかに、言葉が出てくる。前向きな言葉が出てきてよかったと思う。自分の姿は向こうからはどう見えているのだろうか、自分の声は、言葉は相手にどう響いているのだろうか。
カッコ悪いのかもしれないな、幼いのかもしれないな、そんなことは後になって思うのだが、その最中は、そこまで思いも至らず、ひたすらに話していた。気にしてもしょうがないのだ。
最後に出てきた紅茶を飲む頃には落ち着いてきて、少し我に返ったような感があった。夜景が綺麗である。人生長く生きていれば浮かぶときもあれば沈むときもある。浮かぶときがあると分かっていれば、沈むときも耐えられるものだ。
エレベーターがぐんと降下する。昼間の蒸し暑さが嘘のようにすっかりと涼しい風が吹いている。