突き詰める。

先週末はけっこう時間があったので、高倉健の出演する映画「幸せの黄色いハンカチ」と「新幹線大爆破」を立て続けに見た。2作品ともに昭和50年前後の作品だ。これまでこの時代の映画をほとんど見たことがなかったので、新鮮な驚きがあった。

まずストーリーが非常にシンプルである。理解しよう、と奮起して集中して見なくともすっとストーリーが頭に入ってくる。細かい伏線がないわけではないのだが、回収されずに謎のまま終わるものも多く、作り手も大まかなメッセージが伝わればいいや、という感じなのだろう。

CGもないので、特殊効果も作りは粗い。「新幹線〜」における新幹線の外観が現れるシーンなどはほとんど模型であることが明らかで、唯一爆破シーンは原寸大に作ったものを使っているが、張りぼて感満載である。使われている効果音も時代が感じられて味わい深い。

しかしながら2作品とも見ごたえがあった。その1番の理由は、俳優の演技にある。主役級はもちろん、脇役にしても必死で演技をしている。気が狂う人の役など、今の時代に演技をしても白々しくにしか見えないであろうが、見事に演じきっている。他の要素が物足りなくても、演技だけを突き詰めることでこれだけ人の心に残る作品が作れるのか、と驚いた。そう思えば今の映画はどの要素も90点くらいは取れるが、逆にどれかの要素を120点まで突き詰めている、という作品がないように思う。

あと、印象に残ったのが、2作品ともに暴力的なシーンが出てくること。高倉健モノということもあるだろうが、わずか40年前、高度成長期もとうに終わった時代というのに出てくる人間の血の気が多い。このあたりも昔と今で大きく変わったところなんだろうなぁと思った。