八甲田山。

週末は思いの外のんびりと過ごした。たっぷり寝て、近所の野山を歩いたり、横浜まで外食に出掛けたり。一大イベントを前にしてゆったりした時間を過ごせたのはよかった。

★★★

BSで映画を見る。70年代の名作「八甲田山」は、新田次郎の原作を何度も呼んでいたこともあり一度見てみたかった作品。過酷な環境のなかで路頭に迷うシーンは圧巻だったが、長時間の映像作品として、原作とはまた違うエッセンスが詰め込まれていることに気付いた。

3時間弱の作品だが、はじめの1時間は雪中行軍に至る会議の模様が延々と続く。雪のなかのシーンはまだかと思いながらも、この前段階のやり取りに、大げさに言えば社会の病理が描かれているように感じる。思いつきで雪中行軍を提案する上層部、その意向を無下に断れない空気が蔓延する軍隊という世界、上層部の思いつきを上手くまとめようとする中間管理職の苦悩がよく描かれている。

さらに雪中行軍のシーンでは、行軍を成功させた弘前隊と、悲劇を生んだ青森隊の違いが際立つ。それは装備、指揮系統の一貫性、見栄を張らず外部(地元住民)の力を借りたか否か、というところに如実に現れている。端的に言えば、失敗する組織とそうでない組織の違いを表現するのが、原作とは違いこの映像作品の最大のエッセンスになっている。

とはいえ、雪中での俳優陣の奮闘ぶりも凄い。実際の雪崩や吹雪のなかで撮影されたというのがまた凄い。今の時代に同じものは撮れないだろう。