料亭。

料亭といふものに足を踏み入れたのは今年が初めてである。先日がその2度目だったが、なかなか慣れないものだ。

落ち着いた個室に通される。上座下座が予め決められた席に着き、食前酒から始まる。一品ずつ、工夫を凝らしながらも抵抗感の全くない優しい味の皿が出てくる。それなりにお年を召した方たちが中心の会食の席なので、どんどん酒が出てきて、ひっきりなしに注ぎ注がれの絵が繰り広げられる。年上、目上の方も含めて会食は好きなのだが、この酒を注ぎ合うという風習はどうにかならんもんかと思ってしまう。しかし酒量が増えても変な酔い方にならないのは、質もさることながらお酒と食事の相性がきちんと考えられているからなのだろうと思う。

食事や酒の質と、会食の場でなされる会話の質は必ずしも比例しない。こういう場で年上の人と接すると、男はいくつになっても本質的に変わらない生物なのだということをことさら思う。一方で女将さんや給士の方はみな女性で、落ち着きのあるなかにもきびきびとした動きが際だつ。志を持って自分の仕事に取り組んでいるのが伝わってくる。もちろん男もこれが仕事なのであり、気の抜けない場ではあるのだが、なんとも形容し難い違和感を感じてしまうのだ。その違和感をひとつひとつ解きほぐしていくのが、僕たちが歳を重ねていくうえでやるべきことなのだと思う、ひどく酔った帰り道。