城下町。

初めての城下町にたどりついた。夜の電車は気怠い飲み会帰りの人たちで席が埋まっている。みんな家に帰るのだろう。終電もかなり近くなってきたこの時間に、宿泊地を目指して移動をしているのも自分くらいか。

終着駅近くの目的地にたどりついて、乗客が三々五々に家路を急ぐなか、ロータリーにたむろする若者たちを横目に路地を歩く。民家が続く静まった暗闇のなかにぼうっと目的の宿が浮かび上がる。

宿についてお風呂につかって、人心地つく。日ごろからいろんなところにいくのだが、どれだけたくさんの宿に泊まっても、床が変わると眠れないものである。さらには4時を過ぎると空が白み始め、カーテンを閉めていなかった窓からは暴力的な朝日が差し込んでくる。カーテンを閉めていないことを悔やむのだが、起き上がってカーテンを閉め直す気力もない。

ああ、きょうも暑くなるな、とゲンナリするが、窓の外にはお城が遠くに見える。そしてその向こうにある河川、その向こうにある山脈が見える。とたんに、自分が数百年前にタイムスリップしたような気分になる。

2023年に生きる自分もまたいくつか歴史の藻屑になるのだ、と想像にふけり、そうなると細かなあれこれの悩みごとがふっとんで、元気になって身支度をする。