湯治①。

湯治宿、と呼ばれる旅館に泊まったのは2回目くらいになるだろうか。雪深い、趣のある温泉街の宿に泊まる。

木枠にガラスのはまった引き戸が玄関になった、こじんまりとしてレトロな感のある宿が軒を連ねる。引き戸の向こうには右に下駄箱があり、左にさまざまな除雪道具があり、スリッパが等間隔で綺麗に並べられているところまで全く同じである。曲がり角にはこれまた昔風な、左から文字が流れる郵便局も建っている。そして、コンビニというべき、なんでも屋の商店が鎮座している。この雰囲気自体が貴重で、後世に残すべき風景だと思う。

そんな宿の引き戸のひとつをガラガラと開ける。外は氷点下の冷え込みだが、なかは暖房がきいていて暖かく、すぐに眼鏡が曇る。

チェックインを済ませてすぐに温泉に向かう。なんの変哲もない、家庭用のお風呂が少し大きくなっただけの浴場である。そしてこの地域の慣習なのか、脱衣場こそ男女別なのだが、洗い場はつながっていて混浴になっている。濁って浮遊物もある温泉は熱々で、3分と入っていられないのだが、のぼせ上がる前に何度も入る、という意味ではこれくらいがちょうどよいのかもしれない。水風呂はないが、外気浴と交互で楽しむ。道端には除雪された雪が積み上がり、気持ちの良い冷気が体にまとわりついてくる。(明日に続く)