雪の宿。

伊那での素晴らしい体験を経てお宿へ。ここまで、長野にしては雪が少なくて、積雪ピーク時のわが家の近くと変わらないな、と思っていたが、高原に通じるトンネルを抜けると一気に雪深い世界に出くわした。

雪のなかに包まれた宿だ。どこまでいっても静かである。音という音が全て雪に吸収されているようだ。おかげでざわついていた心の中まで鎮められていく。昔仕事のついでに行った青荷温泉に似ている場所だ。

着いてすぐ横になって、温泉に浸かって夕食を摂ると、眠くなってしまう。ここ数年、旅館に泊まると必ず、夕食後に起きていられたためしがない。かろうじて息子ともう一度浸かりにいって、戻るとすぐに眠りに落ちてしまった。

例のごとく3時すぎに目が覚める。1時間くらいもぞもぞとしてもう一度眠ると、夜が明けている。食事を済ませて、雪が激しく降るなか宿を後にする。

ほとんど轍がない国道を走っていく。後ろからきた軽トラに前を譲り、あとをついていく。山を下って雪が消えていくとホッとする。昔山に登っていた頃も同じような気持ちになったことを思い出す。