うめ。

大学の頃一時期顔を出していたサークルでは、毎週のミーティングが終わったあとに必ず「うめ」という食堂で食事をしていた。学生向けのアパートが建ち並ぶなかにたたずむいまにも崩れそうな一軒家である。かなり年を召したおばさんが切り盛りしている。一軒家の部屋に大きな掘りごたつのテーブルを置き、テーブルを10数人が囲む。テーブル周りはほとんど掃除がされていない感じで、飼い猫が周りをウロウロしたり、テーブルの上を闊歩したりする。

女子メンバーも含めて、こういうところで平然と食事ができるのが、僕の育った大学らしいというか、このサークルらしいというか。さすがにいまあそこで食事をしろと言われれば躊躇してしまうだろうな。

ウェブで調べてみても全く見つからない。とうの昔に閉店してしまったようだ。確かおばさんが病に倒れたという話を聞いたような気もする。あれだけ通った店なのに、もうどこにも痕跡が見当たらないというのは不思議な気分だ。あの店はもはや記憶のなかだけで残り続けている。