土偶。

以前、出張ついでに青森に住む友人のところに遊びに行った際に、大きな土偶を見た。木造駅の駅舎に張り付いた、高さ10メートルほどはあろうかという土偶だ。折りしもその日は吹雪で、白く舞う雪の向こうにぼうっと土偶が姿を現わすのはなんとも非日常な体験であった。

月並みながら、土偶は不思議な雰囲気をまとっている。いまだにどのような目的で土偶が作られたのかもわかっていない。魔除けのため、という一説が信ぴょう性を帯びているほどに、土偶の表情は僕の眼を、心を捉えて離さない。乳房や、妊婦であるさまが土偶にされていることにも、なにかを感じずにはいられない。

小さい頃、ドラえもんの映画でも、土偶の姿を見た。当時小学1年生くらいだったろうか。夜布団に入って目を瞑っては、土偶のシルエットがまぶたの裏に浮かんで眠れないこともあったことを覚えている。怖い、という気持ちよりは畏れのような気持ちに近いものだ。

吹く風が寒く感じる季節になってくると、思わず土偶の姿が脳裏に浮かんでくる。