風立。

風立ちぬ』を観た。

批判的な目線で語っても今さらであるので率直な感想を述べると、ジブリの良さがしっかり詰まっていたというひと言に尽きる。宮崎駿は自身の作品のマンネリズムをぶち破りたいと思っていたようだが、やはりと言うか本作も宮崎駿の好きなものである少女とメカニックと豊かな自然にあふれていたし、登場人物はどこかしら聖司や雫、メイがそのまま大きくなったような雰囲気をたずさえていた。

本作を最後に宮崎駿は長編製作からの引退を表明している。結局のところ彼は最後まで自分の好きなものを作ることを貫いた。そこに尋常ならぬこだわりを持ち、精度を上げていったからこそ、ジブリの作品はこれだけ愛されるものになったのだと思う。

あらすじについても今さら追わない。ジブリの作品は、あらすじの本筋ではない、自然のみずみずしさと恐ろしさ(特に本作では『風』の描き方!)、登場人物が織りなす甘美な時間といったところにこそメッセージが込められているし、そのメッセージは言葉ではなくて映像、もっと言うなら映画という文脈でしか伝えられないものだと思う。映画という形態の娯楽の存在意義のひとつを作品を通じて体現したのがジブリであり、宮崎駿だったのだと思う。