ただいま戻りました。

という表題のあいさつ、聞き慣れたあいさつと共に悠太郎が満州から戻ってきた。朝ドラ「ごちそうさん」の最終回のシーンである。半年間続いたストーリーがいよいよフィナーレを迎えることと、ドラマのなかでも気に入っていたフレーズが最終回に登場したことがあいまって、ひそやかな感動と満足感を覚えた。

あまちゃん」の後を次いでスタートしただけに、それほど期待感を持たず見ていたが、なかなか良かった。ストーリーや登場人物がシンプルでわかりやすい。これは小ネタ盛りだくさんの「あまちゃん」とは対極にあると言ってもいいのだが、かと言って物足りなさを感じることもなかった。シンプルでありながら、そのなかに規律があることが良かったのではないかと思う。

その規律が端的に表れていたのが、「ただいま戻りました」のセリフをはじめとして、ドラマ内で礼儀正しく交わされるあいさつだった。そもそも「ごちそうさん」という表題が、食事を終えた時に発されるあいさつである。それが関係しているのかどうかはわからないが、ドラマの登場人物は実にハキハキと場面に応じてあいさつを発していたように思う。それがドラマをピリッと引き立てるひとつのスパイスになっていたのではないだろうか。

展開をシンプルにすることを優先するあまり、伏線をばら撒いておきながらついぞ最終回まで回収されなかったものもあったり、主人公夫婦以外の登場人物の背景が描き切れていなかったりと、ちょっとなぁと思うところもないわけではない。また、週ごとの副題が毎度食べものにひっかけたオヤジギャグ風に作られていて(大阪放送局作成だから仕方ないのか。。しかし最終週の「とんだごちそう」の真意が空飛ぶ豚だとは恐れ入りました)、それが真面目なストーリーの展開と不協和音を起こし気味じゃないかなぁとも思ったが、朝ドラなのでそこまで深く考えて見るのも野暮なのだと思う。朝の支度をしながら見たり、一日が終わって眠りにつく前にリラックスして見たりする分には、ストーリーの細かさよりも、ドラマの全体感が整っていることの方が重要なのだから。

ということで、わが家でもすっかり「ただいま戻りました」のあいさつを使うようになった。柔らかくて丁寧な言葉を使うと、良い波及効果を生むような気もする。そう言えば、うちの妻の、あいさつをちゃんとするところが、好意を深めるきっかけでもあったなぁと昔のことを久しぶりに思い出したりもした。