駆け込み消費という快楽。

消費税率アップまで残り10日を切っての3連休ということで、レジャーの人出も買い物の人出も多いし、駅や道路も混雑しているように感じる。駆け込み消費という言葉がメディアや広告でも煽られ、それに呼応した動きが出ているように思う。実際、小売部門の3月の数字はかなり良いものが出てくるのだろう。

しかし本当に駆け込み消費で得をするものなのだろうか。売り手としては、駆け込み消費と称して3月中にできるだけ売上を立てるべく頑張りながらも、4月以降の落ち込みをカバーするためにどのような施策を打つか、ということはしっかりと考えているはずである。あからさまな消費増税還元セールは禁止されているとはいえ、抜け道はいくらでもあるはずだし、事実4月以降にポイント還元の率を上げることを既に表明している小売チェーンもある。明確な施策がなくとも、売上が落ちるようであれば売り手は価格を下げざるを得ない。その際の値下げの原資は3月までに売った分の利益から捻出することになるわけで、結局のところ駆け込み消費に乗せられた人が一番損をする、という図式になりそうだ。

でも、それはそれでいいのだと思う。駆け込み消費は一種のお祭りのようなものなのだから。駆け込み消費という言葉は、買おうかどうか迷っていた背中を押したり、どーんとオトナ買いをするための願ってもない大義名分になるのだ。本当に生活防衛しなければならない人には駆け込み消費をする余裕すらないというところが本音なのだから、駆け込み消費はやっぱり祭りである。祭りは祭りでみな存分に楽しめばいいのだ。買い物をすればスカッとしたりストレス解消になるのだ。さらにそれが増税前に安く済ませられたとなると(たとえ思い込みであっても)気分が良い。

そもそも、節約して生きる、というのは本当に疲れることだ。節約疲れという言葉があるけれど、今の日本人の多くは節約疲れに陥っているような気がする。将来への不安から過度に今を我慢することは精神衛生上は良くなく、新しいことに取り組む気力を奪ってしまうのだと思う。不況だ、生活を引き締めよというメッセージを放ち続けたメディアが与えた影響は小さくない。それが一転して消費を煽るようになれば、人間の心の奥底にある消費したいという欲求にたやすく火を付けるということだ。今回の駆け込み消費にはそういった側面が大きいと思う。さて3月末、4月以降と売り手と買い手はどう動いていくだろうか。