多様性という豊かさ。

金曜から休みを取って群馬は薬師温泉に。夫婦で温泉宿に泊まったのは久しぶり。普段の出張ではビジネスホテルにしか泊まらないので新鮮でもある。台風も接近していたが、朝には雨が止み陽光も覗くほどに天気は回復した。

★★★

そこそこ評価のいい旅館だけあって、ケチのつけようがないくらいに細かいところまで配慮が行き届いている。廊下や部屋にチリひとつ落ちていないのは当然のこと、エレベーターに腰を下ろすための椅子が用意されていたり、敷地内に点在する浴場それぞれに暖房が入れられていたり、その他気付かなかったところも含めて数え切れないほど手が掛かっている。外資系のラグジュアリーホテルもそれはそれで良いのだけど、日本の旅館はそれよりも凄いと思う。それは安易な言葉だがまさにおもてなしそのものであって、現場のスタッフの心遣いと熟練のたまものによるものなのだと思う。このサービスに触れたなら海外の旅行者もはまってしまうこと間違いなしだ。

ここ一年ほど僻地に出張する機会が減っていたので忘れかけていたが、こうして地方、それも山間部に行けば、日本という国はなんと多様性に溢れているのだろう、ということを改めて感じる。それぞれの地方が唯一無二の文化や風習や名産を持っている。少しでも平地があればそこは人の手が入り丁寧に開墾されており、自然の恵みは豊かで作物の育たない土地はほとんどない。ごくわずかな調味料を除けばたいていの地方では自給自足できる。

地方で一定の評価を得ている旅館は総じて、そのような日本の地方の魅力を感じられることをコンセプトとしている。それは都会で生活する日本人が失ってしまったものでもあり、海外ではなかなか感じることのできない性質のものである。ラグジュアリーホテルは外界とは遮断された異空間を感じられる、という点において魅力があるが、日本旅館はその地域とつながり、地域に溢れる良いものを拾い上げることで魅力を増していくものである。

★★★

台風が去り、雲が途切れて青い空をいく日かぶりに見ることができた。山間部の冷え込みに色付きはじめたカエデやイチョウがパッチワークのように折り重なり、それぞれに露を垂らしながら陽射しを受けて輝きはじめる。

様々な色が交じり合うからこそ、紅葉はより美しく見える。それと同じように、日本という国も各地方て様々に多様性が詰まっているからこそ、輝きを増すのだと思う。そのことに気付いた人たちが、どんどん増えてきているように思う。