寂しさを埋める商売。

土曜日のエントリで触れた、「寂しさ」を埋めてくれるモノやサービス、について続きを書いてみたい。

よく「若者の○○離れ」と言われる。なかでも代表的なものは車だろうか。若者に車が売れない問題は単に若者の購買力が減っただけではない。バブルの頃までは車を持ってこそ一人前であり(それも軽自動車やマーチクラスなどではない)、車を持っていることが女性をデートに誘える条件と言っても過言ではなかった(本当にそうだったのか僕には知る由もないが、年長の人の話を聞くにそのような空気は間違いなくあった)。車という半密室空間は単なる移動手段を超えて異性とのコミュニケーションツールだった。今ではそれはPCや携帯電話やSNSに取って替わっている。そのあたりを意識してか最新のモーターショーでは盛んに車とSNSがコラボした展示が増えてきている。車が人間に対して移動手段以上のプラスαを提示できるか、そのあたりの試行錯誤を繰り返す時期がこれからもしばらく続くと僕はみている。

ソーシャルゲームについては人間の心理を最大限に利用した仕組みだと思う。他者からの賞賛をゲーム内で得るために、お金をつぎ込んでいく仕掛けが作られている。ゲーム業界内である程度のすみ分けができていたはずの任天堂が業績不振にぶちあたっているのは、他者とつながって遊ぶゲームが消費者に選ばれ出したことと少なからず関連があるだろう。

婚活も「寂しさ」をくすぐって、マッチングサービスや街コンなどの消費を煽るマーケティングだと思う。僕は、婚活というムーヴメントは20代よりはむしろ、未婚率がぐっと上昇した今の30〜40代や、一度離婚を選んだ人たちを中心に広まっていくと考えている。婚活という言葉を越えて、それぞれのヒトが人生の後半戦をどう過ごしていくか考え直したときに感じる不安や要望にうまく寄り添うことのできるサービスが、きっと現われるのだろう。

日本の金融資産の8割以上は、60代以上のお年寄りのもとに偏在している。お年寄りもまた、将来への不安や寂しさに苛まれる人は少なくない。そんな不安や寂しさにフォーカスを充てたビジネスはこれから成長産業になるはずだ。そのようなビジネスは少しピントを間違えれば詐欺にもなりかねないが、形はどうあれその中身がヒトの心に寄り添うビジネスであれば、詐欺を越えて社会に必要とされるビジネスになるのだと思う。