メリークリスマス!

バタバタとしていてあまり実感が湧かなかったのだが、クリスマスだったのだ。銀座でしこたま飲み、もうこれ以上飲んだらヤバい、というところで退散し、田園都市線の通路にうずくまりながら帰り、ほうほうのていで家にたどりついた後で深夜の街に出ると、サンタクロースがたくさんいたのだ。

サンタクロースにまぎれて夢遊病者のようにお店のなかを動き回る。クリスマスの時期の思い出は、子どもの頃からもうかれこれ記憶のあるだけで30数回、地層のように積み重ねてきた思い出がある。布団にくるまりながら薄目を開けてサンタさんが来るのを待ったり、夜中に起きてみようと頑張ったり、やがて独りでクリスマスを過ごすことが憂鬱な思春期がやってきたり、その日に向けて無謀な行動に出たことも何度かあっただろうか。デートに行くふりをして大型書店や漫画喫茶で時間をやりすごしたこともあったっけ。そんなこともあって、行きつくところにいまは行きついた感がある。

いつかまた、クリスマスの形も変わっていくのだろう。いまはただ、目の前にある落ち着いた光景を穏やかに受け止めるだけだ。