台風。

先日は台風のなかのフライトだった。朝方から欠航も相次ぎ、さてどうなるかというところであったが、午後を過ぎると運航がはじまったのでひと安心。

とはいえ気が重い。冬の日本海の低気圧のなかのフライトは経験があるものの、台風は初めてである。駐機している状態で既に風で機体が揺れているのでどうなることやらという気分だ。

離陸するとゆらゆらと揺れ、やがてブオッという風の音と共に降下した。機内に悲鳴があがる。僕は胃がふわっと浮いたような感覚になり痛くなる。続けて2度3度と同じように降下を挟みながら、仰角大きく上昇を続ける。こういう状況のなかで平然とニコニコしているCAさんはやっぱりプロだ。身体も心も強くないとできない仕事だ。

もこもこした雲を抜けると飛行は安定する。抜けると、それは見事な夕焼けが広がっている。ひどい思いをしたあとの心身を満たすように、刻々と太陽と空がグラデーションを変えていく。

お腹をさすりながら、しばし窓の外の景色に見とれる。苦しいことと楽しいことは表裏のように合わさっているなあと思う。