月。

とある地方都市にて仕事で懇意にしている人と呑むときは、サイゼリアに行く。前は庄やだったのだが、閉店してしまったのだ。

あまり外でワインを飲むことはなかったのだが、サイゼリアのワインは異常にコスパが良い。少なくともスーパーで売っているパックや簡素なビンのそれに比べれば断然美味い。1.5リットルのボトルを入れても1000円少々である。僕1人であれば250円の小さいデキャンタで完全にできあがってしまう。

ワインがどんどん進むと、隣のおじさんの演説が熱を帯びてくる。話はどんどん飛躍して、宇宙空間を駆け巡るがごとく浮遊してゆく。おじさんの言っていることの8割は間違いであるのだが、残りの2割に真理が詰まっているからこそ、気持ちを入れて話を聞き続けなければならない。

やがてお開きになり、ガランとした駅の階段を駆け下りて、長い長い帰路につく。その帰路の長さは、どれだけ飲んでいても、酔いがすっかり醒めてしまうほどの距離だ。ホームに座りこんでしまった別のおじさんを横目に、電車に乗り込む。窓の向こうの月が大きい。