武蔵小山。

物件調査で、昔暮らした街に降り立った。ゆっくりと歩く。引っ越してからもう6年以上が経つが、時間が止まったかのように街なみは変わっていない。変わったのは自分の年齢だけだ。

今暮らしている街と同様に、不動前から武蔵小山のあたりは坂の多い街である。細い道が多く、再開発もなかなか進まない。都内でも顕著に古い街なみが残されている。

昔暮らしていたアパートにも寄ってみた。そのままの佇まいで残っている。あれから住人は入れ替わっただろうか。狭いワンルームの部屋の記憶が脳裏に浮かび上がる。

商店街も変わらない。驚くべきことに店の顔ぶれもほとんど変わっていない。それだけ安定した客足が続いているということだろう。唯一変わっているのは駅前で、もとあったスナック街がことごとく潰され、巨大なタワーマンションの建設現場となっていた。街の印象を大きく変えるマンションが建つことになる。

あと1,2年もすればマンションは完成し、街の顔になるだろう。それでも僕は、この場所にもとあったスナックや、小ぶりな洋食屋やお代わり自由の中華料理店の思い出を忘れないようにしたい。10年近く前の、大切な思い出だ。