バトン。

今までは1分1秒を惜しんで駆け回っていることが多かったのだが、最近は真っ昼間に気が抜けてしまって、ぼうっと過ごしていることも多い。その日も、夕方の喫茶店で、飲みたくもないホットコーヒーを目の前に、ぼうっと目線の先にあるテレビを眺めていた。

なぜかそのテレビには「おかあさんといっしょ」が流れていた。引っ越してからはまず見ることがなくなった番組だ。いつのまにか歌のお兄さんは変わっていて、見慣れない新コーナーが展開されていた。

息子と同じ年ごろの男の子が登場してくる。この番組をよく見ていたのは、息子がもっと小さかった、1-2年前くらいのことだ。いつのまにかこの番組に出てくる子どもたちと同じくらいの大きさに息子は成長している。

自宅から遠く離れた、出張先の街の喫茶店で、冴えない気持ちでモニターを見つめていた。そしていつしか、親の世代から自分の世代に、そして息子の世代にバトンを渡していく姿を、頭の中でイメージしていた。

成果を出せるか、落とし穴にハマりこむかはわからない。どうなるかはわからないけれども、最後までベストを尽くす姿勢だけは、捨てられない。僕が息子に伝えられるのはそれだけなんだから。