一歩、前へ。

いまの会社に入ってもうすぐ10年になるが、初めての福岡出張となった。あいにく荒天ではあったが、見知らぬ土地を訪れるのはいつも気分が湧き立つ。

市内での用事を終えて、少し郊外に足を伸ばす。見慣れない街並みをゆるゆると移動する。時折雨が強くなり、フロントガラスが水しぶきでいっぱいになる。

ひとしきり目的地を巡って、地元の人から説明を受ける。自分自身の第一印象を大切にするために、最低限の図面以外はあえて事前に情報を頭に入れずに、真っ白な状態でまず捉えてみる。

簡単に実査を終えて市内に戻る。そこで改めていろいろと情報を取って、今後の組み立てを考える。コントロールの容易ならざるリスクはいくつもあり、根気もいるだろう。断ってしまうのは簡単で、下手なオブリゲーションも負わずに済む。

しかし、行きの機内で件の「野村證券〜」を読んだ影響か、必要以上にリスクを恐れることもないだろう、という思いが頭をもたげてきた。それだけが理由ではないが、このところ少し萎え気味だった心に、少し火が灯った。