ゆっくり。

毎年少なくとも一度は、雪による東海道新幹線の遅延にぶちあたってしまうが、昨日がちょうどそれであった。名古屋到着前から窓の外は雪景色となり、岐阜の市街地を過ぎると、東北を走っているかのように、雪深い光景が姿を現した。

線路にもしっかりと雪が積もっている。新幹線の車輪が雪をこする、サクッ、シャリッという音が絶え間なく聞こえる。普段よりもゆっくりと窓の外の風景が流れていく。不思議なもので、速いスピードで走っている時には見つけなれなかった、車窓の風景、例えば看板などが、ふいに視界に入ってくる。

ゆっくりと走っているから、見えるものがある。速く走っていると、見逃してしまうものがある。それはおそらく、車窓風景だけではなく他のことにもあてはまるのだと思う。放っておけば、いつも目の前のことに忙殺されて、来し方を思案することなく無為に時間を過ぎ去らせてしまう。

新幹線は、結局新大阪に36分遅れで到着した。朝イチのアポは当然遅刻になったが、僕はいつもよりもゆったりとした気分で、ホームに降り立った。