長い日。

今年の将棋界の一番長い日は、週末の土曜日であった。深夜、外出先から帰ってきて状況をチェックする。最後の対局が終わるのがだいたい午前1時を過ぎ、感想戦も含めると午前2時をまわるのが常の「長い日」をここ数年追いかけてきたが、最近の僕の生活は早寝早起きにシフトしており、起き続けるのは困難な仕業に思えた。しかしながら、狙って夕食後に飲んだブラックコーヒーの効果もあり、スマホのなかで続いている熱闘の効果もあり、最後まで状況を追いかけ続けることができた。

結果はここには紹介しないが、今年も凄みのある戦いを目の当たりにすることができた。いくらコンピュータ将棋が発達しても、これだけの感動を創り出すことはできないだろう、というくらいに、全身全霊をかけて戦う棋士たちの姿は気高いものであった。ぎりぎりの戦いの果てに、名人挑戦を決めた者、下のクラスへの降級となった者、それぞれに結末が訪れた。

対局を終えた後の棋士たちの姿が印象に残る。降級をかけた対局、挑戦をかけた対局のどちらも、対局終了後の棋士たちはすぐに声が出せない状態だった。そこからぽつりぽつりと言葉が紡ぎ出され、対局の振り返りが行われ、戦いの境地にあった棋士たちの精神が現実世界へと降りていく、その一部始終を見られるのがたまらなく幸せだった。