仄暗い。

大阪の郊外を走る学研都市線に乗る。沿線に親戚が住んでいるので、小さい頃からよく乗った路線で、懐かしい思い出もたくさんある。

長尾駅の先が大阪府京都府の境になっている。台地をくり抜いたであろう切り通しを抜けて、電車は松井山手という駅に着く。この駅は、小さい頃にはなかった。もっと言えば、僕が小さかった頃、長尾駅の先は電化されておらず、赤茶けたディーゼルカーが1両だったか2両だったかでトコトコと走っていた。長尾駅の先は鬱蒼とした森と牧歌的な田園風景が広がっていて、街中で育った僕にとってはトトロの森のような、異世界に思えた。

やがて森がなくなり、トンネルとなっていたところが切り崩され、道路が縦横に敷かれ、その中心に松井山手駅ができた。子ども心に、異世界が壊されて、街がそこに侵食したような感覚を覚えた。新しい街の雰囲気はただただ明るかった。

それから25年以上が経った。明るかったその場所は、年月の経過によって多少くすんでいた。くすんでいたけれども、暗いのとは違う。暗いものをいったん明るくしてしまうと、もうもとの暗さには戻れない。暗いものを明るくするということは、そういうことなのだ、と寒空にしみじみと思う。