逆上がり。

仕事納めの日も地方都市を歩く。冷たい雨があがって控えめに太陽が顔を出す。急ぎ足で歩いていると身体があったまってくる。ふと、小さな公園に出た。鉄棒が目に入って、なんのインスピレーションか、逆上がりをしてみようと思いついた。ベンチに鞄を置く。

コートを着たままで鉄棒を握って、よいしょと地面を蹴ってみた。想像よりも僕のお尻は重くて、つま先が鉄棒よりも高く上がりきらないうちに重力に抗えず足が落ちる。中途半端な思い切りではできないと、鉄棒を握り直して、思い切り勢いをつけて地面を蹴る。つま先は鉄棒を高く越えて、身体が棒に巻きつく。すんでのところで回転が止まり、身体が元に押し戻されそうになるが、そこでもうひと踏ん張りすると、なんとか身体は棒のうえを回っていった。足の裏全体に響きわたるような振動で、両足でビタンと着地する。

20年前にもこうやって逆上がりをしたことを思い出した。今もあるのかは知らないが、受験した中学の試験科目にはなんと体育があったのだ。鉄棒は、前回り、逆上がりと後ろ回りだったか。後ろ回りはどうやってもできなかった。

手のひらに独特の鉄の匂いがこびりつく。鞄を拾ってまた歩き出す。