マフラーマン。

それなりに寒いけれども、ぶ厚いコートを羽織るまででもないこの季節は、マフラーを巻くのに最も適した季節になる。昔から僕は冬のアイテムのなかではマフラーを好んで使ってきた。

マフラーの効用は、実用的なところにではなく、精神的な部分にこそ重きが置かれるのだと僕は思っている。具体的に言うと、マフラーを巻くと、実際に巻かれている首よりもむしろ、胸が締め付けられるような気持ちになるのだ。マフラーを巻いたまま、暖房の効いた室内や車内に入って頭がぼうっとしたり、はたまた肌を刺すような冷気のなかにいると、普段なら恥ずかしくて言えないようなセリフや、頭の片隅にしまってフタをしておいた感情がむくむくと浮かんでくる。それがなぜなのかは自分でもよくわからない。

本当に昔のことだけど、僕にとって恋にまつわるアクションはきまって、年末年始を挟んだ2ヶ月間に起こっていた。これはクリスマスというイベントに煽られたというよりは、マフラー装着による効果の方が大きいのではないかと自分では思っている。マフラーは媚薬に似ている。だからか、最近はマフラーを巻く頻度が少し減ってきたように思う。