阪神。

もう旧聞に属する話になりつつあるが、日本シリーズ、タイガースは29年ぶりの日本一とはならなかった。東京ドームでジャイアンツに4連勝したこともあって勢いはタイガースに分があると思っていたが、個々の選手の地力や戦術面をみればやはりホークスが勝っていたようだ。タイガースが勢いを止められ、がっぷり四つに組まされたままに押し切られた、そんな印象を持つシリーズだった。

最後は守備妨害というなかなか見ない幕切れとなった。9回表、1点を追いかけるタイガースは1アウト満塁から打者の西岡剛が1塁にゴロを打つ。3塁走者はアウトになったものの、ダブルプレーは取れず、2塁ランナーがホームを踏んで同点、となったと思いきや、打者走者の西岡が送球を妨害したことでアウトを宣告された。一見して理解しがたいプレーで、せっかくの日本一の瞬間がぼやけた。

タイガースらしい結末なのかもしれない。力はあるのだが、勝つことに慣れていないがために、勝負どころでその力を出し切れない。もっと言えば勝負に徹しきれない。ファンにしても、暗黒時代の記憶が残っているので、どこか生温かい目で見てしまっているところがある。端的に印象に残るのは、去年のクライマックスシリーズカープとの2戦目、5点を追いかける9回に、引退を表明していた桧山進次郎が代打で2ランホームランを打ったシーンだ。確かに感動的なシーンではあった。ただ、ファンも選手も、その感動的なシチュエーションに浸りきって、残る3点を追いかける、という気持ちが消えていた。感動的なシーンが見れたから、負けてもよかった、このまま負けても納得できる、と皆が思ってしまっていたのではないか。この考え方も否定すべきではないが、結局のところ、こうした姿勢こそが、強いチームになるには一歩足りないのだと思う。だからこそ愛すべきチームなのだ、という考えももちろんあるだろうが。