レイルウェイ・ライター。

種村直樹氏が亡くなった。

彼の名前を目にすることはほとんどなくなっていた。僕自身の鉄道オタクとしてのピークは7歳〜15歳くらいで、その頃毎月図書館で借りて隅々まで読んでいた「鉄道ジャーナル」(我ながらなんと渋い子ども!)には彼の文章が毎月必ず掲載されていたし、彼の書き下ろしの著作もほとんど読んでいた。その頃既に彼が名乗っていた「レイルウェイ・ライター」という肩書きは僕にとって憧れそのもので、大人になったらそのような仕事をしたいと思っていた。

気付いたら彼の文章を読まなくなっていた。理由はいくつかあるが、一番は自分自身がちょくちょく鉄道旅に出かけられる年齢、立場になったことだろう。旅を擬似的に体験させてくれたのが彼の文章だったわけで、それを自力で満たせられるようになって、彼の文章から離れていくことになったのだろう。鉄道以外にも興味が広がったり、他に打ち込むことが見つかったりで、自分のなかに鉄道という趣味の占める割合がどんどん小さくなっていったこともある。

彼自身も、2000年以降は病を患ったりと、困難な壁にあたり、著作のペースも鈍っていた。正直彼の文体もマンネリ化していた。それでも、彼以外に「レイルウェイ・ライター」を名乗る者がいなかったのは、彼が鉄道旅のパイオニアであることを皆が承認していたからであろう。ローカル線やローカルバスの乗り継ぎ旅は、いまやテレビ番組の定番ネタにまでなっている。