里崎。

9月11日、里崎智也引退表明。一時代を築いた選手がまた1人ユニフォームを脱ぐことになる。

里崎にまつわる思い出はたくさんあるが、一番記憶に残っているのは2010年の日本シリーズ第7戦だ。前日に続き壮絶な延長戦の末にマリーンズが日本一を掴み、胴上げのシーンが映し出されたあとに、実況のアナウンサーが「実は里崎選手には終わるまで言うなと言われていたのですが、左肩にガングリオン(腫瘍)ができていたことを隠してプレーを続けていたのです」と言った。

この年の里崎は左肩だけでなく怪我を抱えていた。8月ごろからはマスクを控え捕手の的場に譲り、里崎は2軍で怪我の回復に務めた。里崎のいないチームは終盤に失速し、ぎりぎりの3位に滑り込む羽目になった。クライマックスシリーズから里崎は復帰し、そこからは神がかり的な活躍を見せたのだ。身体の状態からめいっぱいプレーできるのは10数試合程度だと感じていたこと、そしてその大切な10数試合はどのタイミングなのかを、まるで未来から見通していたかのように現れた。

この一件に象徴されるように、いつもいつも活躍するわけではないが、ここぞという場面での力の出し方を本当によく知っているプレーヤーだった。監督という立場でその力がどのように発揮されるか、楽しみにしている。