クリスマス失恋の記憶。

今も大して治っていないとは思うが、昔の僕は変に見栄っ張りなところがあり、独りでクリスマスを過ごすことが絶えられなかった。生涯で6回くらい告白をしたことがあるがそのうちの3回は11月から12月にかけて。明らかにクリスマスを一緒に過ごしたい、というよこしまな欲望に動かされている、なんと浅はかな人間だったことか。こと恋愛においては僕は追い詰められるといろいろと早まったり変な行動をしてしまう習性があるようだ。

★★★

一度、クリスマスイブ直前に彼女と別れたことがあった。ホテルとレストランの予約をして、僕はやる気マンマンだったのだが、3日前くらいだったか、突然に別れを告げられた。食い下がろうとした僕の内心には(クリスマスどうしてくれるんじゃい!)という気持ちもあったことは否定できない。せめてもの思い出にクリスマスくらい一緒に過ごさないか、という意味のわからない提案をしたような記憶もある。今振り返ってみると呆れる話だが。。しかしながら彼女はきっぱりと断り、僕の前を去って行った。その先のことを考えて変に未練が残るようなことをしない、という意味で正しい判断だと今なら思える。

そうして僕は独りになり、ホテルとレストランの予約をキャンセルし、クリスマスイブの日は昼すぎから23時ごろまでまんが喫茶に篭った。街ゆく人と顔を合わせたくなかった。もし知り合いの誰かと会ってしまったら(そんな確率は限りなく低いのに)、どんな顔をしていいかわからなかったからだ。心が敏感になりすぎていて、とにかく刺激を受けそうなものから全て自分を遠ざけたかった。

★★★

この年のクリスマスが1番記憶には残っているけれど、それ以外の年のクリスマスもどっこいどっこいだった。変に背伸びしてホテルを取ったり、友人とつるんで自虐的になったり、クリスマスという言葉に踊らされ、また呪縛のように突き動かされていた。

なぜだろう、クリスマスは楽しく過ごすべきという強迫観念でも持っていたのだろうか、記念日に対する執着心は強い方ではなかったし、バレンタインデーに寂しい思いをするのもへっちゃらなのに、クリスマスだけはやけに身に沁みる。子どもの頃のクリスマスが特段ワクワクするイベントだった記憶もないのだが。

今年もクリスマスがやってくる。ここ数年のクリスマスは、年末に向けての仕事にほぼ目処がついて、少々張っていた気持ちが緩んだタイミングで安堵感とともにやってくる。昔はいろいろあったけれど、今は穏やかに迎えられればいいと思っている。