aikoと秋の夜長。

三連休、台風が来ていたこともあって、近場にはちょこちょこ出掛けたが、全く電車に乗らなかった。海外のリゾートで一週間過ごすよりも、国内でドライブに行くよりも、芯から疲れが取れた感じ。普段奥底に潜んでいる疲れをこれでもかと引っ張りだして、太陽の下で甲羅干しさせた感じ。積極的に疲れに向き合ってあげてはじめて、こんなところにまで疲れが染み込んでいたのかと気付いた。最近やることに追われがちな生活だったので、追われるんじゃなくて自分から追いかけられるように、体勢を立て直す休みになった。

★★★

高校生の頃女性シンガーで人気があったのはなんと言ってもaikoだった。最初はFM802という大阪ローカルのFM局がヘビーローテーションしていたはずだ。FM802は関西では知らない人がいないくらいに盤石のポジションを持つラジオ局だが、90年代には無名のアーティストに光を当てるということをよくやっていたのだ。aikoだけでなく、花☆花や矢井田瞳などもそうやってFM802に育てられた。あの頃のFM802の試みは、今振り返ってみると凄いと思う。当のパーソナリティの人たちも意識していたかしていなかったかはわからないが、大阪から全国にヒットを飛ばすことを体現していた。

その後瞬く間にメジャーなアーティストに駆け上がったaikoだが、デビュー時のFM802の後押しを受ける姿から、個人的にはいつまでも大阪に根を張るアーティストだというイメージが強い。さらに、aikoの顔はまさに大阪顔そのものだなぁと関東に出てから気付いた。

aikoの顔は、同級生でものすごく可愛かった子の顔とすごく似ている。大阪的な価値観で言うと「べっぴんさん」なのだ(けして他の地方の目線からaikoや彼女が評価されていないと言うわけでもないが)。人懐っこそうな鼻、ちょっと離れた目、垂れ下がった口、トレードマークともいうべき前髪、ややもすれば癖のありそうなそれぞれのパーツ、どれもが微妙に男ゴコロをくすぐる。

そして外見だけではなく、歌詞がいいのだ。一言で言うと女々しいのだ。日々女々しく生きている世の中のそれなりの割合の男子にとって、目の前の恋にドキドキしたり、終わった昔の恋をうじうじと思い出したりしている女の子もいるんだと希望を持たせてくれるような、そんな切ない歌詞をメロディに乗せて唄ってくれる。aikoのファンに男子が多いのもうなづけるのだ。

涼しくなって、日が暮れるのも早くなった秋の夜には、aikoの歌がよく似合う。たとえおっさんになっても。