ひょんなきっかけから深く考えずに購入したこの本。
- 作者: 喜多川泰
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2006/07/10
- メディア: 単行本
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★★★
自己啓発本ながら、小説のような形態。ストーリーは変哲のないもの。そのなかで、著者の伝えたいことが女の子とその父親の言葉を借りて語られている。著者が直接語る形でないからか、恩着せがましいところは一切なく、抵抗なく言葉を受け入れられる。
そして、内容は限界まで一般化された抽象論にとどめられている。自己啓発本と言うと、自分にあてはめられるものもあればそうでないものもあったり、というものが多かったが、この本については全てのエッセンスが、自分なりに具体化してあてはめられた。
エッセンスにしても、その一文だけを取り出してしまえば、あぁそういう考え方もあるね、と表面だけで鵜呑みにしてしまいそうな内容だ。それを、腹に落ちるように読ませるのは、著者の文章が上手いということなのだろう。平易な文なのに、構成のなかで読ませる文章が生まれている。
正直、自己啓発本と聞くだけで条件反射的に拒否反応を示してしまう僕が、この本を手に取ったのは全くの偶然だ。内容を知っていれば先入観から手に取ることはなかったと思う。お金を出して買ってしまったし、仕方ない読んでみるかと思って読みはじめた。こういうのが案外セレンディピティになる、という下心がないわけではなかったけれども。
著者の方のことも、恥ずかしながら名前を聞いたこともなかった。塾を開いているのだという。そう言えば、僕の人生、価値観に大きな影響を与えてくれた人も、長年塾講師をしていた。子どもと向きあって、子どもの心を何よりも大切にしながら、結果を出せるようにサポートすることに勝負をかけている人だった。著者の方も、形は違っても、似たような考えを持って、教育にかかわっているのだと思う。塾という、達成すべき目標を明確に追うことを求められる環境だからこそ、目標を立てる過程によって、目標に向かうために頑張る力に大きな差が出ることを痛感していて、だからこそ自己啓発に結びつく考えが生まれてくるのではないか、と僕は思っている。
★★★
ということで、今後も折にふれて読み返してみたい本になった。というか、その時の精神状態や、年齢や、環境によって、読後感がどう変化するのか、身をもって感じてみたい。