気持ちと実力。

僕は立派な人間ではないし、むしろダメダメなところの方が多いような奴なのだけれども、ひとつだけ言い切れる真理がある。

ビジネスでも、友人関係も、恋愛も家族も、おおよそ他者と関わりあってものごとを成し遂げようとするには、向かい合う相手に対して、「相手を幸せにしたい」という気持ちを持たなければ、うまくいくことはない、ということだ。甘い考えだろうか??

口や態度からそんな素振りが見られなくても構わない。大切なのは気持ちだ。気持ちが欠如していれば、それは相手にたやすく見破られる。見破られないケースがあるとすれば、それは双方に「相手を幸せにしたい」という気持ちがない場合だ。その場合両者の関係はたいてい悪い結末を迎えることになるだろう。

「彼女が欲しい」「いい男を捕まえたい」という言葉には、相手によって自分を満たす、というニュアンスしか感じ取れない。自分が満たされるために他者とつながろうとする関係はどこか歪んでいる。自分が相手になにをしてあげられるか、相手が幸せになるために自分はなにができるか、このことがわかっていない人は何をやってもダメだし、知らず知らずのうちに人が遠ざかっていく。運良く幸せを手に入れたとしても、長続きすることはないのだろうな、と思う。

かく言う僕も20歳くらいまではこのことが全く理解できなくて、この頃までにお付き合いした人や好きになった人には本当に迷惑をかけたと思う。どうやって相手のことを思えるようになったか、きっかけはここでは書けないけれど、僕にとっては僥倖であり、その時に付き合っていた人や周りの人に感謝すべきなのだろう。あとそれだけでなくて、家族の愛をたっぷり受けたことも大きかったことは間違いない。どれかひとつが欠けてもいけなかったのだろう。自分が満たされて初めて、他者の力になりたいと思えるようになることも否定できない。満たされると感じる水準の高低や、自分で自分を満たすことが上手いかそうでないか、は重要な要素ではあるけれど。

と、ここまで「気持ち」が不可欠だという話をしてきたけれど、「気持ち」だけではどうにもならないこともあることも確かだ。要するに相手を幸せにしてあげられる実力のことだ。身も蓋もないが、「気持ち」はあるはずなのにものごとがうまくいかないことは少なくない。もしかすると「気持ち」がないケースよりも多いかもしれない。

ものごとがうまくいかない時は、「気持ち」か「実力」のどちらかが欠けている。文字にしてみるとごく当たり前のことだけど、現状を直視するのは難しいし、辛い作業である。