たかが仕事。

一昨日述べた自分のなかで仕事の優先順位が低い、という件について掘り下げてみたい。

優先順位が低い、というのは、けして仕事を軽視しているわけではないし、義務としてやっているわけでもない。一日少なくとも8時間、休日を含めても一年の1/3以上を費やしているものだから、できることなら嫌々でなく楽しくやりたいものだと思っている。ただ、僕は仕事を自分のアイデンティティにしたくない、という気持ちが強くて、優先順位というものさしでは低くなったということだ。

アイデンティティにしたくない、ということをもう少し掘り下げると、僕は仕事をRPGゲームのように捉えている。オフィスに入る時、お客さんのところに入る時、外でメールを打ったり電話している時、考え事をしている時は、ゲーム機器の電源を入れて、RPGゲームのスタートボタンを押し、前回の続きをロードして遊ぶようなものだ。今風に言えばログインとログアウトのようなものか。セーブして電源を落としてしまえば、仕事のことは綺麗さっぱり忘れる。なので、深夜や休日に仕事用の携帯電話にメールが入ってきたりすると、自分が意図しないのにスイッチを入れられたような気分になって非常に不快である。

RPGの名の通り、僕は仕事という世界でとある役割を演じているだけだ。言わば仮想現実である。仕事をしている時の自分はいくつかある分人のひとつであり、仮の姿である。自分の本当の姿はあくまで仕事でない私的な場面、先日の優先順位のなかで序列の高いもののなかに現れる。

仕事で結果を出したり相応のポジションにつくために、こういう考え方は甘いと思われるかもしれない。ただ、僕はこういう考え方であっても結果を出したり出世することは可能だと信じているし、結果や出世のために自分のこの考え方を曲げるつもりは一切ない。譲れないところである。別に仕事を自分のアイデンティティに置くことを否定するつもりもないが、その考えは危険だと思っているし、そのような考えを押し付けられるような人、組織には近寄りたくない。個人的には不幸の匂いしか感じられない。

一生をかけて取り組んでいきたい仕事であれば、自分のアイデンティティをかけることもありだとは思う。しかしながら、無理にそう思う必要は全くないし、世の中のほとんどの仕事は、あくまで人生のうちの一定期間関わるだけの代物でしかない。少なくとも僕は、仕事よりも大切なものがいくつもあると思っているし、仕事と自分の間には少し距離を置いて付き合っていきたい。