10勝16敗。

千葉ロッテマリーンズ大嶺祐太、2年ぶりの1軍登板。

プロ初登板もこの季節だった。高校を卒業して石垣島から来たばかりの18歳は、カブレラに豪快なホームランを浴びたものの、150キロを超える伸びのあるストレートを投げ込んでいた。同い年の田中将大とともに、パリーグを背負って立つ大投手になる、と思わせる投球内容だった。あれから6年になる。

10勝15敗、というのが彼の通算成績である。鮮烈なデビューを経て、2年目から4年目にかけては、先発投手として独り立ちするかに見えた。ツボにはまった時はいい投球をするが、コントロールを崩してピンチを招き、自滅してしまう場面を見ることの方が多かった。カウントを悪くすると、本来の力とはほど遠い力の抜けたボールが甘いコースに行き、痛打を浴びた。2年前、これまた同い年のハンカチ王子こと斎藤祐樹と投げ合うも、満塁ホームランを浴びて降板した姿を最後に、1軍のマウンドからは姿を消した。投球フォームをいじろうとして、肩を壊したとこのこであった。このままユニフォームを脱ぐのではないか、そんな声も囁かれていた。

★★★

沖縄は高校野球の盛んな土地である。身体能力の高い選手も多い。その割にプロの世界で活躍した選手はそれほど多くない。その理由として、沖縄の県民性があるのではないかと言われてきた。のんびりしていて、勝ち負けへのこだわりが強くないことが、プレッシャーに弱いメンタルにつながっているのではないか、そう言われてきた。大嶺祐太もまた、これまではピンチになると弱気そうな表情がたやすく顔に出てしまうことが多かった。

しかしながら、昨日の登板では落ち着いた、大人になった姿を見せてくれたのだ。ピンチになっても闘う表情は変わることなく、これまでのようにあっさり土俵を割るのではなく、粘り強い投球内容を見せてくれた。味方の援護もなく、惜しくも後続の投手が打たれて負けがついてしまったが、内容は勝ち投手のそれにふさわしいものだったと思う。小谷投手コーチも、次回以降の起用を明言するほどの内容だった。なにが彼にプラスになったのか。

もう一度、10勝16敗のところから大嶺祐太のストーリーがはじまる。今度こそ、彼本来の力を発揮してくれると、そう信じている。ずいぶん遠回りをしてきたけれど、彼が彼なりの歩みでたどり着いてきた場所で、確かに輝くことを、マリーンズファンと石垣島の皆が心待ちにしている。