知恵熱。

長崎出張に行ってきた。今の会社には5年以上いるが、意外にも九州には縁がなく、出張で行くのは初めてなのだ。まず神戸に立ち寄り、そこから新幹線と在来線特急を乗り継いで西に向かう。ちらちらと見える瀬戸内海の島々や、有明海の対岸に遠く揺れる光を見ていると、西日本がいかにきめ細やかな地形の連なりであるかが感じられて、太古からこの海を行き来して暮らしていた人々の姿が浮かんでくる。やがて暮れかかって人気の少なくなった長崎の駅に降り立つ。ホームの端は車止めになっていて、まさに行き止まりの駅である。かつてはこのホームから東京と大阪まで寝台特急が走っていたのだ。すぐにホテルには向かわずにその足で稲佐山に登る。カップルや中国人団体客が大勢いるなかで独りで夜景を見る。強い風が吹いて寒いのだが、星空を反転させて映し出したような景色を前に去り難い思いが強くなり、結局1時間近く展望台にたたずんでいる。明確になにかを意識して考えていた訳ではないけれど、意識の奥底が大きく渦巻いて、意識して避けていたであろう命題に答えを出すべく脳が回転していることに気付く。

移動ばかりの1日で疲れたのか、ホテルの夕食をたらふく食べるとすぐに眠くなり、22時前に意識を失う。気付くと朝の4時になっている。眠れなくなって、バスタブにお湯を張り、iPhoneを片手にじっと浸かる。お風呂から上がっても引き続き、考えごとをしながら日課となっているWebの記事とコラムの読み込みをしているうちに、だんだん空が青みがかり、やがて青から白に変わって、夜が明ける。外が明るくなるにつれて逆に眠気が増してきて、もう一度ベッドに潜り込む。目覚ましもかけずに眠ってしまったので、次に目が覚めた時には時計が8時半をまわっており、少々焦って朝の支度をする。

いくつかの用事を終えて、日差しの強い昼下がりに街を歩く。予定より1本早い飛行機に予約変更したので、空港行きのバスに乗るべく急いで長崎駅前に戻るべく市電の停留所まで小走りで向かえば、たちまち汗だくになる。市電の車内の空調で汗を乾かしていると、身体がだるくなり、微熱が出ているような感覚になる。まずいな、と思いつつ肉まんを頬張り、バスに乗り込み空港に向かう。時折思い出したようにくしゃみが出る。飛行機にはぎりぎりで間に合って、東京に戻る。飛行機に乗ると手に汗をかく性質のある僕は、しきりに天井の送風口に手を当てては乾かそうとしていたのだが、これがさらに僕の体調を悪化させる。脳がぼおっとしている。