感覚を破壊する指し手。

そろそろ梅雨も空けそうで、いよいよ夏らしくなってきた。7月に入ってからたっぷりと睡眠を取れることがなかなかなくて、午前休を取った昨日は9時間、三連休初日のきょうも8時間+昼寝1時間眠った。まだ眠たい。夏こそしっかりと寝て、栄養もしっかり摂りたい。

★★★

里見香奈女流四冠が、史上初めての女性の正棋士を目指して奨励会で修行を積んでいる。細かな例外事項はあるが、26歳までに四段昇段する、というのがプロの正棋士になる基準であり、20歳になったばかりの里見女流四冠は、現在初段という位置で、他のプロのタマゴと切磋琢磨している。奨励会には150人ほどの棋士のタマゴがいるが、初段にあたる強さというのはそのなかの中の上くらいの位置にすぎない。女流棋士のなかでは向かうところ敵なしといった彼女ですら、奨励会のなかでは埋もれてしまうのである。三段の奨励会員が30名強ほどおり、そのなかで晴れて四段に昇段できるのは年間4人しかいない。プロの正棋士になるのは非常に狭き門なのだ。

里見女流四冠は島根県の出身であり、現在は関西奨励会に所属している。以前は、実家のある島根県から対局の度に高速バスで大阪に来ていたそうだが、去年から大阪市内にアパートを借りて、一人暮らしをはじめた。関西将棋会館で行われるプロ棋士の対局の記録係として名前を見かけたり、対局のネット中継でも、控室で形勢を検討する写真などがアップされると彼女の姿が見られることが多い。毎日のように将棋会館に通い詰め、文字通り将棋漬けの生活を送っているようだ。

素人目ではあるが、彼女の最近の対局の棋譜をみていて、着実に将棋が進化しているように感じる。昨年初めに奨励会に入会して以来、指しこなす戦法のバリエーションが広がっている。それに加えて、一見すれば彼女が優勢に進めているようには見えないのに、気づけば最終盤では彼女が一気に相手の王様を討ち取っている、という棋譜が非常に増えているように感じるのだ。

このなんとも言えない不思議な強さは、羽生善治二冠の対局の棋譜からも感じることができる。彼もまた、素人目には不利そうに見える局面から、しばしば鮮やかに勝ちをつかみ取る。もしかすると、対局相手でさえも彼に騙されているのかもしれない。対局相手に、自分のほうが形勢がいいと錯覚させるような指し手を重ねて、相手の感覚を破壊させる。そんな鬼のようなレベルの入り口に、里見女流四冠も足を踏み入れつつあるのかもしれない、と思わせる。これからどこまで実力を伸ばしていくのか、ますます目が離せなくなっている。