セカンドキャリア。

TBSがもう8年くらい続けている『プロ野球戦力外通告〜クビを宣告された男達〜』の特別版が放送されていた。この番組はもともと年末の深夜にひっそりと放送されていたのだが、最近はより早い時間帯に放映されるようになり、番宣もみられるようになった。そして今年、年末の何でもない時期に特別版として放送されるようになっているということで、どんどん露出が増えているように思う。人がクビになってから新しい人生に歩み出すまでの道のりをカメラが密着するわけだから、はっきり言って趣味の悪い番組で、そんな番組を欠かさず見ている僕も相当に趣味の悪い人間なのだけど、僕のような人は少なくないのではなかろうか。バラエティと違って、見た後に自分のなかにすごく残るものがあるのだ。

今回は特別版と言うことで、以前の放送で特集された選手のその後が追いかけられており、目新しく登場した選手はおらず、少々手抜きして番組を作った感は否めなかったが、それでも十分面白かった。どこが面白いのかというと、選手だけでなく、その家族にもライトがあてられるのだ。選手の奥さんはもちろんのこと、幼い子どもにもマイクが向けられる。(関係ないが、やはりプロ野球選手は活躍の有無にかかわらず結婚が早いし、すぐに子どもを作っているなぁとついつい個人的に思ってしまう)トライアウトと呼ばれる12球団合同の入団テストでは、夫の、パパのおそらく最後になるであろうユニホーム姿を見つめるまなざしにカメラが向けられる。言葉はなくとも、万感のメッセージをびんびんに感じる。

そして、現役続行の道を断たれた選手が新しい道に踏み込むその姿からも、感じることは多い。今まで野球のことさえやっていれば良い、と言われてきた選手が、なにも分からない社会に放り出されるのだ。元プロ野球選手、という肩書きがあれば普通の人よりも恵まれているじゃないか、と思うかもしれないが、普通のサラリーマンの転職や、脱サラと比べてもはるかにハードルは高いだろう。時には不本意さを背中ににじませながらも、新しい世界で歯を食いしばって、家族を養い続ける姿が、テレビで映し出されてゆく。

近年は四国や北信越独立リーグができたため、独立リーグでコーチになったり、球界復帰を目指して夢を追い続ける選手も増えている。もっとも、年俸はあってないような水準であり、球界に復帰できる確率を考えても、夢を追い続けることが良いとも言えない。プロ野球球団にしても、昔は親会社の広告宣伝費扱いだったのが、現在では単体での黒字経営を求められるようになっており、経営環境が厳しくなってきており、コーチや球団職員として抱え続けることも難しくなっている。一方で、こうして引退後の選手が特集されることで、本人の新たな道が拓けることもある。よくある飲食店経営だけでなく、プロ野球選手を集めた野球教室を経営する会社も出てきた。時代が移り変わっているが、セカンドキャリアの選択肢は増えているように思う。

そんなことを考えていると、普段見るゲームも新しい視点で見えてくる。