ギリシャ再選挙。

今週末はギリシャの再選挙。公務員リストラや年金削減といった緊縮策は行わず、ユーロ圏には残留したい、というともすれば支離滅裂な主張を掲げるSyrizaこと急進左派連合が第一党の立場に躍り出るか、緊縮策を掲げるNDこと新民主主義党が第一党の地位を守るかが焦点となっている。大学時代に通貨をネタに論文を書いた身として、非常に注目している。

Syrizaが勝利すれば、ギリシャのユーロ離脱→ドラクマ復活を通じて、国内経済が大混乱となる可能性がある。NDが勝利すれば、とりあえずユーロ離脱はまぬがれるだろうが、さらなる緊縮策の徹底により、国民生活はより苦しくなるだろう。明確にどちらがいいとは言えない。強いて言えば失うもののない若い世代は、ドラクマに戻してゼロからやり直すほうがまだましだと判断するのだろうか。

働きたくない。でも、これ以上、生活が苦しくなるのは嫌だ。ユーロ圏にも残りたい。でも、緊縮ばかりではやってられない。ギリシャ国民1人ひとりにとっての今回の一票の意味は重い。まさに土壇場だ。そして悪趣味な言い方だが、土壇場でこそ人の本性は現れる。ここ1年の日本と日本人が、良い面悪い面の双方で本性を世界にさらけだしたように。

ドイツを筆頭にユーロの中核国は、ギリシャへのこれ以上の追加支援に消極的になっており、ユーロ離脱したければどうぞ、というスタンスに変わりつつある。新札の準備だけは手伝ってあげよう、と英国の印刷所でのドラクマ紙幣の印刷準備がはじまっている。マーケットは既にギリシャのユーロ離脱、という(世界金融市場にとっての)最悪のシナリオをほとんど織り込みつつある。

そもそもの経緯として、ギリシャはユーロ共通通貨圏への参加時に自国の財政実態を偽って申告したという前科がある。特にドイツ国内において、ギリシャ国民への不満は高まっている。欧州中央銀行は、まるでギリシャに見せつけるかのように、銀行危機に陥ったスペインに対して先んじて流動性資金供給を行った。

土壇場でこそ人の本性は現れる。ギリシャはどういう選択肢を選ぶだろうか。ここにきて、ギリシャ国内の新聞は、ユーロ離脱した場合の悲惨なシナリオをことさら強調する記事が増えたという。何もかもが思い通りに進むことはもうない。自分で選びとった選択は、自分で責任をとっていかなければならない。世界のマーケットを荒らして、中核国の譲歩を引き出すことはもはや難しいように見える。選挙の結果がどちらに転ぶかは今もって全くわからない。ただ、世界は既にどちらに転んでもいいように準備している。あとは彼らが自分の手で選びとるだけなのだ。