ダルビッシュ有が吹き込んだ風。

紀伊半島をぐるっと新宮まで行って帰ってきた。地元の人は冷え込んだと言うが、陽射しは強く暖かい。白浜や潮岬と言えば20世紀には観光地として有名だったが、今は訪れる人も少なく閑散としている。ただそれだけに、むやみやたらに開発されていないし、気候や自然の豊かさは申し分ない。魚が美味しい(結局現地では4食連続で寿司を食べた)ところや雨が多いところ、熊野古道の通る山間部など、有している要素は屋久島に非常に似ていると思う。それだけに、少しマーケティングを工夫してきっかけを作れば、人が来るようになるようにも思う。今のように閑散としているのがいい、という考え方もできるが。

★★★

おカネの話の続きをしようとも思ったが、前回まで書いたところで少し自分としては満足してしまったので、いったん違う話を。

ダルビッシュポスティングシステムによるメジャー挑戦が決まった。つい先日札幌ドームでの最後の挨拶が行われた。

今でこそそんなことを言う人はいないだろうが、東北高校のエースとして甲子園のマウンドで投げていた頃のダルビッシュは、時として留学生のような色眼鏡(ダルビッシュはイラン人の父親と日本人の母親との間に生まれた、日本生まれ日本育ちのハーフである)で周囲から見られていたように記憶している。当時既にメジャーリーグからの誘いもあったが、最終的に日本のプロ野球を選んだ理由として、『日本の野球にこだわって、俺は日本人だというアピールをしていきたい』と語っている。それから7年間の、ファイターズ&WBC日本代表での活躍は言わずもがなだ。

札幌ドームでの最後の挨拶で彼は、『今ここにあるのもファンの皆さんのおかげ』『またいつかここに帰ってこれたら嬉しい』という言葉を残した。なんとカッコいい、なんと懐の大きい人間の発言だろうか。

スポーツには、凝り固まっていた社会の空気をほぐし、新しい時代を引っ張っていく力が備わっていると思う。一昨年のワールドカップで、若い日本代表が巻き起こした旋風も、去年のなでしこジャパンの栄冠も、社会を前に進めていく大きな原動力となった。少々大げさかもしれないが、ダルビッシュ有ロールモデルとして、日本の社会に新たな風を吹き込んでくれることだろう。今スポーツ界では競技を問わずハーフの選手がどんどんトップレベルで出てきている。その流れがいまにスポーツ界を飛び出して社会全体に溶け込んでいくことになるだろうと期待している。