将棋と僕。

二年くらい前から、自分のなかで第三次将棋ブームとでもいうべき流れが起こっているのだが、最近ますますその流れが強まっているように思える。端的に言えば、将棋というゲームが映し出す世界にどっぷりとはまってしまっている。

最初に将棋を好きになったのは小学生の頃で、クラスで流行って学校の休み時間に指すというよくあるパターンであった。ちょうど羽生さんという駆け出しのすごい棋士がいるらしいと世間でも話題になり始めた頃である。しかしながら実際のところはそれほどのめり込むこともなく、棋力もほとんどつかなかった。毎年夏に行われる区のこども将棋大会にも出ていたが、二•三回勝ち抜いては負けるという具合だった。ある時など、将棋盤に向かってうんうんうなっている時に、大会運営のおじさんに、「あれ、もう王が取れるよ」と言われた。自陣にある角の利きが、相手の王将まですっと通っていたのだ。当時はその程度の棋力及び視野だった。並行して新聞の将棋欄を毎日読んだりもしていたが、終盤の詰むか詰まないかのところ以外はほとんど理解できず、ただの随筆として読んでいるだけであった。

その後確か中学に入った頃に羽生さんが七大タイトルを全て制覇したのだが、その頃から僕のなかで将棋はフェードアウトしはじめ、次に将棋を指すようになったのは大学二年生くらいの頃になる。なにがきっかけかは忘れてしまったが、気付けば大学の寮の一室で将棋を指し始めていた。昔のわずかな知識だけで指していたので、相変わらずお粗末な棋力であった。指すこと自体は楽しかったが、わざわざ勉強するほどの気力は起こらなかった。そうこうしているうちにまた僕の脳裏から将棋は消えてしまった。

そして、数年前から三たび将棋に出会った。仕事に少し余裕が出始めた頃、最近の将棋はしばしばWeb上で公開や中継されていることを知った。なぜか今回はただ自分が指すだけでなく、他人の指し手に込められた意図や想いを測ることが面白く感じられた。時間にも余裕があったので、自分なりに研究もするようになってきた。なかなか棋力の向上にはつながってはいないが、以前よりも自分の気持ちをコントロールし、より相手の立場に立ちながら指せるようになってきた。これからもどんどん新しい世界が開けていくのだと思うとワクワクする。