クラウディングアウト。

不良債権がらみの仕事をしていると、気を付けていればめったなことでは人生失敗しないものだと思えてくる。常に冷静な心を保つことさえできれば。

法人にしろ個人にしろ、不良債権が発生するときには、当事者は油断したり、浮かれていたりで、冷静な判断力を欠いていることが非常に多い。そんな時に、本業ではない分野に手を出したり、本業において過大な投資(とそれに伴う借入)を行うことで、その夢が覚めた(バブルがはじけた)時に資金計画の歯車がどんどん狂ってゆく。本人が過ちに気付くのは全てが手遅れになってからだ。夢まっただなかにいる時にはその過ちには気付きようもない。

そして、どうも日本という国も、そろそろ夢から覚めようとしている気がしてならない。夢から覚めるということは、財政破綻になる、ということだ。そのきっかけは震災ではないかと思う。

震災が来るまで、日本国内には資金が余りきっていた。筋肉質な経営を行う企業はどんどん銀行からの借入を減らしていた。仕方なく、銀行は集めた預金の運用先として国債を購入していた。そのため、政府はどんどん国債を発行することができた。国の借金がどんどん増えても平気のへいざだったのはこのためである。これは国債がバブル状態にあると言っても過言ではない。

しかし、震災を機に潮目は変わっている。企業は失ったストックを回復させるため、投資を行うこととなる。そこで、借入をおこしたり、預金を取り崩したりといった動きが起こる。そうなると、銀行が余剰資金を国債購入に充てる、という図式が成り立ちにくくなってくるのである。国債の一番の買い手である金融機関がこうした行動を取ると、発行した国債が消化されにくくなり、結果として金利が上昇する(金利を高くしなければ買う人がいなくなるからである)。そうなると、国家予算においても利払費が嵩んだり、保有している国債に損失が発生することで、金融機関の経営が厳しくなる。そうなればスパイラル的に事態は悪化していく。激しいインフレ、大増税、大幅な円安、保険・年金の価値消滅、失業率の大幅上昇などが起こると思われる。

もちろん必ずここに述べたように事態が悪化していく、とも限らないが、少なくとも今の日本国債は『夢まっただなか』の状態であり、大きなリスクが存在する、ということは確実に言える。最悪のケースを回避する手立てはまだいくらでもあるはずだ。