チャリツーキニスト。

5月14日に引っ越すことが決まった。ここ3年ほど自転車通勤をしていたが、それも来週の一週間で終わりになる。

もともと東京に引っ越してきた時点では将来の自転車通勤を見越して部屋を決めたのだが、当初非常に仕事が忙しく、なおかつ数回のアップダウンを含む片道8キロの道のりに、なんとなく心が遠のいていた。東京に来た翌年の春から、仕事にも余裕が出てきたので、自転車通勤をはじめた。やはり当初は毎日筋肉痛になっていた。特に麻布十番から飯倉の交差点に向かってだらだらと登る坂はこたえた。

暑くなってからも毎日自転車に乗り、時には夕立にずぶ濡れになりながら、ひと夏を越える頃には、筋肉痛も消えて、坂もぐんぐん登れるようになっていた。神谷町→田町→品川周りや、六本木→広尾→目黒周りなど、いろんなルートを開拓して、気分や脚の調子にあわせてルートを使い分けるようになってきた。なによりも、一日のなかで電子機器も付けず、ただ自転車を漕ぐ時間は、精神にプラスの効果をもたらした。イライラすることがほとんどなくなった。もちろん自転車を漕いでいる間も無我の境地というわけではないが、寝ている時に夢を見るのと同じような効果を脳にもたらしているんじゃないかと思う。その代償として、スーツのおしりの部分がすりきれはじめるのは確かに早かったが。自転車のタイヤはおおよそ3,000キロで駄目になった。一度は前輪後輪ともにタイヤを履き替えたが、二回目には自転車を買い替えた。三年間で11,000キロくらい走った。よく一度も事故に遭わなかったもんだ。

高校三年生の時に、勉強に息詰まって、大阪市内の実家から淀川をどんどんさかのぼって、京都との府境まで自転車で走ったことが何度かあった。その時のここからどこにでも行ける、これから何者にだってなれる、という気持ちを今もひきずっているのかもしれない。これからはどこを走ろうか。