傷口。

人間だれしもコンプレックスを抱えながら生きている。前の職場はとりわけ、コンプレックスの塊のような人物が多かったように思う。才能は持ち合わせているのだけど、なにかにつけて他人と比べてしまったりだとか、不意の挫折にぶちあたってしまい、屈折した思いを抱えながら、そしてコンプレックスが時にはむき出しになるような形で、傷口を晒しながら生きている人の姿をしばしば見かけた。

コンプレックスは必ずしも悪いものではない。コンプレックスを原動力にして成果を出す人もいるし、戦っていくための大切な燃料になることは確かだ。そして、そうやってもがきながら生きる人の姿はけして醜いものではない。むしろ、表面的には醜いものであっても、その中身には人間の機微が混じっている。コンプレックスをこじらせて袋小路に詰まってしまう姿もまた、たまらなく人間らしい。

かくいう自分のコンプレックスは、周りから見ればどのように映るのだろう。コンプレックスを抱えている自覚はある。自分のことは案外分からないものだなと思う。